シューベルト「魔王」のあらすじ解説&個人的感想

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小学校か、中学校の音楽の授業でシューベルトの「魔王」を聞いた記憶があります。

音楽、特にクラシックは美しい癒される曲ばかりだと思っていたので怖い曲にびっくりしたことを覚えています。


クラシックでもこんなお話の曲があるんだ!
と感心したものの、内容も忘れ、その後、もう一度聞くこともなく今まで過ごしてきました。


どんな音楽なのか、
あらすじや、解釈など紹介します。

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●登場人物

題名を見るだけでも恐ろしい感じが伝わります。
まずは、登場人物から紹介します。人物?魔王だったら人間じゃなさそう…

「魔王」には
語り手
父親
息子
魔王

が登場します。

シューベルトが作曲したのは1815年、18歳の時です。

ひとりの歌手とピアノのための歌曲ということで、
歌手がひとりで4人の役を歌うようになっています。(4人別々の人が歌う場合もあります。)




●あらすじ

「魔王」は、元はゲーテの詩でした。

この詩はたくさんの作曲家が歌曲の詞として用いられたということですが、
最も有名なのがシューベルトの「魔王」です。

ある夜、馬で急ぐ父親。
その腕には高熱にうなされた息子。

「お父さんには魔王が見えないの?」
「あれはただの霧だよ」

「お父さん、魔王の声が聞こえない?」
(…私と一緒においで…)
「お父さん!魔王が僕を苦しめる!」


父親は、馬を急がせたが、腕の中の息子は…


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●個人的感想&解釈


ハッピーエンドでは終わらないラスト

学校で初めて聞いた時は、クライマックスだけを聞かせてもらったのかと思います。

激しく、ドイツ語の叫ぶような歌声と、
教科書に載っていた青黒い夜の森の中で風に向かって、
必死の形相で子どもを抱きかかえながら馬を走らせるお父さんの絵。


なんとなく思いだせるだけですが、当時はいろんな疑問が湧いてきたのを思い出します。

なぜこの曲を作ったのか?
なぜこの曲を学校で聴かせるのか?
今でも思いますね。


できれば最後はハッピーエンドになってほしかったと思う人、多いんじゃないでしょうか。

最後の終わり方は、子どもの頃に聞くにはショックで、
親になった今聴くと、さらにお父さんの気持ちが伝わって、なんとショックな最後…。



動画でいくつか「魔王」を観ました。

4人の登場人物をひとりの歌手の方が交互に歌いながら、最後はたぶん、お父さんの気持ちが現れ、
必死に息子を助けようと、やっと辿り着いたのに、息子を守り切れなかった無念というか、悔恨というか…空虚ともとれるような感じで遠くを見ていました。


呆然とたたずむっといった感じで悲しさを通り過ぎ、
唖然としてしまった感じです。



演奏は難しい音楽

音楽としては、かなりの技術が必要です。

伴奏のピアノもオクターブで嵐の中の馬が走っている様子をあらわし、
左手で不気味な音を演出し、かなり速く気持ちも高ぶります。
歌の方は、ひとりで何役もこなすというだけでも大変です。


語り手は、中音域で短調のメロディー。
父親は低音域で長調と短調のメロディー。
息子は高音域で、単調を使い恐怖におびえるメロディー。

後になるほど高く、大きくなっていきます。


魔王は、長調で、はじめはやさしくささやくように、誘惑します。
だんだんと激しくなっていくのを徐々に調が上がって緊張感を高めていくようになっています。



曲全体としては、素早い音階で恐怖と馬の走る感じをオクターブの3連符で表現。

登場人物によってリズムが違い、後になるほど音楽が早くなり父親が馬を急がせる様子を表現しています。


目的地に着いたときに音楽がゆっくりになり、ピアノがいったん止まります。
ハッとさせられたと思ったら、衝撃の最後がいきなり訪れるという感じです。



子どもの声とピアノの音が接触する部分があって当時は斬新過ぎて理解されなかったとか…
この曲が有名な理由は技術的な斬新さにあるのかもしれませんね。



魔王とは何なのか

そして、「魔王」とは何なのでしょう?

死神?
妖精の王?
はたまた心の中の病魔や恐怖心からの妄想?
実はお父さん?


なんていう意見というか説があります。

どうとらえ、解釈するかは人によって違います。



ドイツ語の言語ですが、他の言語に訳されるときにさまざまなイメージがつく場合もあったようです。
日本では「魔王」ですが死神?という声もあります。


そして、ストーリーも息子を病院に連れていくのか、
連れて帰るのか、息子は病気?どんな病気?
息子は魔王に連れていかれたということなのでしょうか?

どんな家庭の人なのか、
実際にあったお話なのか?


など、いろんな疑問というか想像が浮かんできます。


そんないろいろと想像をふくらますことができる曲なのではないかと思います。


どんな音がどんなふうに聞こえてどう感じるのか、
歌詞を知る前と知った後では聞こえ方が違う?
感じ方が違う?

とか…
さまざまに感じられる曲として学校でも取り上げられたのではないかと思います。


なので、教科書の絵を見ながら聞いてしまわないで、はじめはなんの予備知識もなしで聴いてみたかったですね。



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魔王が有名になったわけ

だとしてもシューベルトはたくさん名曲を残しています。
ゲーテの詩を曲にしたものは「のばら」があります。

美しい曲がほかにあるのに「魔王」が有名になったのは、
他にはない曲だからなのでしょうか?


音楽って楽しい、美しい、光の部分と、悲しい、怒り、焦り、など暗い部分の表現もあり、
悲しい時には悲しい曲を聴いて、泣くと気持ちが楽になったりしますよね。
と音楽療法士さんが話しておられました。



そういう意味でこの「魔王」は、非現実のようで、
誰にでも訪れる「死」をテーマにした、心の焦りや、恐怖心、失敗、後悔など、
一番奥深くの人の心をつく曲なのかもしれませんね。





●まとめ

シューベルト作曲の「魔王」。
学校でも教材となるほど有名な歌曲です。

元はゲーテの詩で、あらすじは
父親が高熱の息子を助けようと夜中、馬を走らせるなか、
息子が魔王の声を聞き、恐怖におびえるという曲です。

最後は目的地に着くもすでに息絶える息子。


早いピアノの伴奏にひとりで4役の声を出す歌手。
魔王はやさしく誘惑し、その声におびえ叫ぶ息子。
その言葉に焦る父親…



魔王とはいったい何者のなのでしょう?
息子は魔王に連れていかれたのでしょうか?
どこへ向かっていたのでしょう?

いろいろと疑問や想像が膨らみます。


音楽としてもリズムや速さ、表現方法の違い、
いろんな解釈ができる曲なのではないでしょうか。


また喜怒哀楽さまざまな表現ができる音楽の素晴らしさとして、
人の心の奥深くにある死への恐怖や、目に見えないものへの不安、
心の葛藤などを表現したという点で、この「魔王」は名曲ということなのでしょう。


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